No.16783 認知症の義父母の介護が理由じゃ転勤できない?!

質問(相談内容)
■ Q:
車で9時間ほどかかる認知症の義父母(グループホーム入居中)の各種手続き、支払い、その他経済的な事情で、2年前から主人は義父母が住んでいる地元へ転勤願いを出していました。何とか話も進んでいたのですが、急に転勤の話が白紙に流れてしまいました。事情を全部話して進んでいたのに今さら!と頭にきました。どうしても転勤したいなら、「往復の交通費などの詳細状況がわかるものを提出するように」といわれたそうです。裁判所じゃあるまいし、どうしてそんな個人情報を会社に見せなきゃいけないんだ?!見せたってわかるわけないのに!上司には「嫁さんだけ行かせられないのか?」「親をこっちに呼べないのか?」と無茶なこともいわれたみたいです。

回答(相談内容に対する回答とお礼)
◆A1:
今の会社は、「人事に口を出すな!」という感じで、個人の理由では人事に便宜を図ってくれません。でも、「提出」は当たり前だと思いますよ。きちんと状況が証明されないのに人事に手を加える会社の方がおかしいです。そう思ってひとつ怒りを鎮めてください。ご主人も、人事について会社に話をすることは大変な勇気と心労を要したことだろうと思います。夫婦・家族助け合って頑張ってください。

◆Q :
お返事ありがとうございます。今日1日かかって「提出」する書類を作成しました。義父母の立替支払い、往復の交通費・宿泊費、成年後見人手続き費用など、ざっと2年間で約700万円かかっています。少ないのか多いのかわかりません。

◆A2:
転勤願いを受理してもらえず悩んでる方もいれば、逆に、介護をしていて家を離れられないのに転勤を命じられて困っている方もいます。
まずは会社の就業規則を確認してみてください。いくつかの支店がある企業でしたら、「会社は、業務の必要に応じて、従業員に転勤を命ずることができる」などの規定があると思います。つまり、会社側が従業員に転勤を命ずることには何の問題もありませんし、その命令に妥当な理由があれば従業員は従わなければいけません。
ただし、転勤によって従業員が不利益を被るようなことがあってはいけません。例えば親の介護などをしている場合などは、転勤によって経済的・精神的に大きな負担がかかります。もし転勤をいい渡されたら、介護の必要性を会社に説明し、転勤命令を取り消してもらうよう交渉してください。
今年4月のことですが、介護をしながら働いている人に希望を与えてくれる出来事がありました。大手食品メーカーの従業員2名が、「家族介護ができなくなる」として転勤命令の無効を求めた訴えに対し、大阪高裁は一審判決を支持し、従業員の訴えを全面的に認めたのです。
裁判長は「転勤で家庭崩壊も考えられる。甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもので、配転命令権の乱用にあたり無効」と指摘し、「単身赴任は事実上不可能で、転勤先に同行させれば知らない土地に住むことで病状が悪化する可能性がある」と、転勤命令は不当であると判断しました。
今回の判決は非常に大きな意味を持っています。今後、同様の裁判が行われた場合には今回の判決が参考にされますし、介護をしている従業員に対し、会社側もむやみに転勤を命ずることができなくなります。

◆A3:
育児・介護休業法をご存じですか?これは、家族などを介護するために取得できる休暇制度で、一般的には「介護休暇」と呼ばれています。
介護休暇の対象となるのは、(1)配偶者、(2)父母、(3)子、(4)配偶者の父母、(5)同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。以上にあてはまる家族の誰かが2週間以上の介護を必要とする状態になると、会社に申請すれば介護休暇がもらえるのです。
この介護休暇は法律で定められているので、会社側は拒むことができません。会社に介護休暇の制度がなくても、申請すれば取得することができるので安心してください。また、介護休暇を取ったことを理由に解雇したり、転勤させたりすることも法律で禁止されています。
休暇の期間はのべ93日です。つまり93日の休暇期間を使い切るまでは、2週間以上の介護が必要になるごとに介護休暇を取ることができるのです。ほかにも介護休暇を申請すれば、過度な残業や深夜労働を強制されることがなくなったりしますので、「介護休暇」を有効に使ってください。

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