No.16168 ごみに囲まれて暮らす利用者の上手な介護プラン。(2005年)
質問(相談内容)
■ Q:
片付けとにおいの問題でとても困っています。66歳で生活保護のご利用者、ほとんど目が見えず両手にもしびれがある方です。部屋中に荷物やゴミがうず高くあって、ごみの中で壁にもたれるようにして休まれています。皮膚疾患や褥瘡もあることや、室内で転倒する危険性が高いため、ご本人に相談しながら掃除をすることになりました。が、部屋中のいたるところに食べ残しや洗っていない衣類が散乱していて片付けても片付けても、時間制限があるサービスでは埒があかない状態です。部屋中に充満している強いにおいで、担当ヘルパーさんが「もう限界だ」と音を上げてしまい、本当に困っています。皆さん、こうした事例にはどのように対処されているでしょうか?
回答(相談内容に対する回答とお礼)
◆A1:
生保で独居・ゴミの中で生活となったら、もう施設入所だと思いますけど。生保の人が一定基準(全入所者の1割以上)居ると税制で優遇されるので、退所で1割を切ると、優遇制度を利用している施設は懸命に生保の人を捜しまくります。最近の老健の事例では、捜しあてて、生保・独居・風呂なし(半年入浴していない)人に入所して頂きました。本人はとても喜んでいました。福祉事務所の人も喜んでいました。定員の1割の基準を確保している施設は受け入れてくれないかもしれないという難点はあると思います。
◆A2:
直近の利用者さんは、ゴミと衣類の山の中の隙間に倒れていたところ民生委員の方に発見され、緊急入院。退院前に別居のご家族と近隣のご依頼で、片づけをすることになりました。
ご本人との話し合いは、ケアマネが病院に約1カ月毎日のように見舞いに行き、ご了解を頂きました。在宅介護支援センターに聞いたら、ゴミ処理だけで数十万円、といわれて、そんな負担をお願いできないので、事業所総出でがんばりました。体中が痒く、皮膚科に通うことになりましたが、めでたく退院してきた利用者さんが、意外にも、きれいになったと喜んでくれて、有償ボランティア料金を気持ちよくお支払いくださり、そのうえ、ビール券を下さいました。
あんなに捨てることを拒否していたのは、いったいなんだったんだろうと、今でもケアマネと首をひねっています。
◆A3:
清潔が良いというのは一般的であって中にはゴミに囲まれていたい(ご本人にとっては ゴミではないんでしょうが)という方もあるのかもしれません。ご本人が本当に必要としていることを見極めていくしかないんじゃないのでしょうか?
以前、犬小屋よりひどい住居にお住まいの方がいました。離れでしたがゴミと悪臭と狭い小屋の中で1時間にできることはしれていました、まもなく寝たきりになり亡くなりました。救急車で運ばれましたが返されたようです。こんなこと良いはずはありません。でも援助・介護の押し売りはできないんでしょうか? とても無力感を感じました。強制執行という制度はないんでしょうか?
◆Q :
介護保険制度は、契約の当事者が対等の立場で取り決めを行うことが前提ですよね。ですから、措置制度のように、行政処分として行政が一方的な判断によって対処の仕方を決定し、実施するのではなく、ご本人の自己決定や選択がなによりも重視されます。だから、こういう事例に出会うと、本当に困ってしまいます。その後の状況をお話すると、担当のヘルパーさんが、皮膚疾患や悪臭に悩まされながら、文字通り悪戦苦闘してやっとベッドを入れられるようになりました。ご本人は最終的には(!)喜んでおられるので、やっぱり延々と続いた苦心惨憺は報われたというのが実感です。まだまだ難問は山積しているのですが…。確かに、“何処まで続くぬかるみぞ”という感はありますが、でも、人はそれぞれ自分だけの人生を生きておられるのですから、そのこと事態をとやかくいわずに、淡々とお手伝いをすることを喜びにできればと思っています。